老朽化が進む日本の上下水道管
公開日:
:
業界ニュース
先月の記事でも紹介したように、今日本の水道管が急速に老朽化しています。
上水道管の耐用年数は40年といわれていますが、40年前にあたる1975年以降、水道の発達につれて集中的に上水道管が地中に埋められました。その管がこの数年で耐用年数を越え、水漏れしてしまう問題が各自治体を悩ませています。
水道管の水漏れは深刻な二次災害をもたらします。上水道管が大きくなればなるほど、水の流れる勢いが増すため、漏水したときの水の勢いも大きくなります。水は土砂も一緒に巻き上げて噴き出すため、仮にガス管が近くにあると、ガス管を破損させ、ガス漏れを併発してしまい、大事故を引き起こしかねません。
また、道路の下をはしる水道管が漏水すると土砂を流してしまい、道路の陥没が起こります。大量の水が噴き出して、道路が洪水状態になってしまうこともあります。
老朽化した管は交換や修理が必要ですが、人口減が続く自治体は水道料金の回収額も減少し、水道管を取り替える予算の捻出に苦しんでいるのが現状です。
国は、漏水していない管はできるだけ使用を継続し、漏水が多発している老朽管から優先的に交換することで、修繕にかかる費用を抑えることに努めています。そこで、地中を掘り返さずに水道管の漏水を検知するシステムが注目を集めています。
上水道管の異常を検知する「漏水監視サービス」
漏水が起きると漏水音が発生します。「漏水監視サービス」では、その漏水音を振動としてとらえセンサーで検知します。そのセンサーのデータを集積し、クラウド上で解析することで、上水道管のどこで漏水が起こっているかをパソコンやタブレットで把握できるのです。
スイスの「Gutermann」社製 漏水探索機
設置例
PC・タブレットで見るマップ画面(NEC社製)※マップ上の赤い部分が漏水疑義地点。緑は異常なしの箇所(クリックで拡大)
「漏水監視サービス」は、広い範囲の中から数mの範囲で漏水場所を絞りこみ、最終的な判断は、上水道管の水の流れる音に異常があるかどうかを聴診器で聞き取る調査方法で検知を行います。しかし、線路の下を通っている管や風の強い場所、漏水多発地帯など従来の手法では調査しにくい場所では「漏水監視サービス」が役に立つのです。
清掃せずに下水道管の不具合を検知する「下水道管路マネジメントシステム」
一方、下水道管の耐用年数はおよそ30年。
下水道管は上水道管とは違い、重力を利用して生活排水、汚水(トイレやお風呂の水)を流す造りになっています。管自体を坂道になるように布設し、一定の距離ごとにポンプを設置し、下水を汲みあげて坂道を流し、下水処理場まで運んでいきます。
日本には、およそ合計46万キロ、地球11周以上の長さの下水道管が埋まっています。コンクリート製の下水道管は30年ほど経過すると、腐食したり、クラック(ひび)が入ったりする可能性が高くなり、道路陥没の要因となる。
下水道管の老朽化などによって、全国で1年間に3000件以上もの道路陥没が起きています。多くは20センチ以下の小さな陥没ですが、数メートル幅の道路が落ちる陥没も起こっています。布設して50年が経過した管は約1万キロあるといわれ、今後維持管理の対象数が急増すると考えられています。
出典:国土交通省 管路施設の年度別管理延長
現在、管内の調査は水をせき止め、下水道管の中を清掃して、汚泥や土砂を取り除いた後で管内を調査しています。テレビカメラで調査する場合、1日に調査できる距離はおよそ200メートル程度でしかありません。しかも管内を掃除するときに出る汚泥は処理費も発生するため、コストの面からも課題が多いのが現状です。
そこでNECは、従来のテレビカメラ調査を補完する調査手法「下水道管路マネジメントシステム」を開発しました。これは従来型のテレビカメラ調査を行う個所を特定するために、広く早く管内の状況を把握できる技術です。
ロボットを下水道管に入れて下水管の中の写真を撮影し、顔認証や指紋認証技術などで国際的に評価の高いNECの画像解析技術を活用し、下水道管内の不具合を検出して調査者の確認作業を効率化させるものです。
下水道管路マネジメントシステム 調査ロボットの概要
下水道管内の水を流したまま、清掃をしないで調査を行うことで、1日に調査できる距離を延長し、コスト面でも下水管内の清掃や汚泥処理がなくなるので、費用を削減することができます。
出典
http://www.huffingtonpost.jp/nec-information-square/water-pipe_b_9233788.html
http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html
https://www.jswa.go.jp/kisya/h25pdf/0214kisya.pdf
PC
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
お手間でなければぜひ本記事のご紹介をお願いします。関連記事
-
-
昨年のエアコン国内出荷家庭用増加に転じる 業務用は引き続き低迷
2016年(暦年)のルームエアコン(家庭用エアコン)の国内出荷台数は前年比3.1%増と14年
-
-
ノーリツ「足湯deワールドカフェ2016」開催
湯まわり設備メーカーのノーリツは11月18・19の両日、外国人や日本人観光客などが多く訪れる
-
-
16年の環境産業市場規模 過去最大の104兆円 経済・雇用への影響増大
環境省はこのほど、環境産業の市場規模・雇用規模などの推計結果をまとめた「環境産業の市場規模・雇用規模
-
-
TOTO 便座から立ち上がりをセンサーがお知らせ 医療施設向けウォシュレット
TOTOは、入院患者が便座から立ち上がったことを看護スタッフに知らせるトイレ内の見守り支援システムを
-
-
15年度末浄化槽普及率9.14% 「浄化槽の日」に普及啓蒙キャンペーン展開
環境・農林水産・国土交通の3省はこのほど、2015年度末(16年3月末)の浄化槽の普及状況を公表した
-
-
パロマ オランダのボイラー・給湯器メーカーを買収 欧州市場に進出
パロマが100%出資する米国子会社の「Paloma Rheem Global, Inc.」(ジョージ
-
-
2014年度産業機械 ポンプ受注0.3%増 内需0.7%減、外需3.2%増 産業機械全体では2年連続増
日本産業機械工業会がまとめた2014(平成26)年度の「産業機械受注状況調査」によると、ポンプの受注
-
-
アルミ協会 品質保証のガイドライン策定
日本アルミニウム協会は3月29日開いた理事会で「品質保証に関するガイドライン」を策定した。 会
-
-
15年度伸銅品需要 当初見通し下方修正 銅管は4.6%減と低調
日本伸銅協会はこのほど、2015年度の伸銅品需要(生産)について当初の前年度比微増予想を下方修正し、
-
-
楽天 エネ需要開発協組と業務提携へ
楽天とエネルギー需要開発協同組合はこのほど、LPガスと電気のセット販売などでの業務提携に向けた検討を